“中東の盟主”と呼ばれるサウジアラビア。突然のサウジ赴任の異動内示を受けたものの、日本語の情報も少なく、現地での生活をイメージしにくいのではないでしょうか。
サウジアラビアは、2016年に長期国家政策「Saudi Vision 2030」を発表し、国をあげて変革に取り組んでいます。2019年には、観光ビザの発給が開始されるなど、着実に改革が進んでいます。
今回は、リヤド駐在の魅力を徹底解説すると共に、住居、子育て、教育面を含め、現地での生活の実態をご紹介いたします。
なぜサウジアラビアは今サッカーに沸いているのか: サッカーを通して国家戦略『サウジビジョン2030』を読み解く
1. サウジアラビアの一般情報
サウジアラビアは、アラビア半島に位置しており、アラビア半島の約8割の面積を有しています。世界第2位の原油埋蔵量を誇り、石油輸出国であることからも日本との関係が深い国となっています。
また、イスラム教の聖地メッカとメディーナを有するイスラム教の国となり、絶対君主制の国となります。
(1) 基本情報
国名 | サウジアラビア王国(Kingdom of Saudi Arabia) |
首都 | リヤド |
人口 | 約3,370万人 |
国土面積 | 215平方km |
国王 | サルマン・ビン・アブドルアジーズ国王 |
皇太子 | ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS皇太子) |
公用語 | アラビア語 |
宗教 | イスラム教 |
通貨 | リヤル |
日本との時差 | 日本 −6時間 |
日本からのフライト | 直行便なし。ドバイ・アブダビ・ドーハ経由が良く利用される |
首都リヤドは内陸にあることから、空気が乾燥しており、湿度が一桁台を記録することもしばしばあります。また、夏場は50度近くまで気温が上昇する一方、冬場の朝方は意外にも一桁台の気温を記録することがあるようです。
(2) 滞在している日本人数
外務省の公表データによると、在留邦人数は628名(2024年1月時点)となっています。
サウジアラビアの駐在都市は、首都のリヤド、紅海沿いのジェッダ、世界一の石油会社サウジアラムコのお膝元であるダンマンの3都市であり、日本人数も多少違いはあるものの、概ね各都市200名前後となっています。
(3) 英語の普及状況
公用語はアラビア語となりますが、外国人労働者が多いことから英語も広く普及しています。
国民の約3分の1が外国人労働者であることからも、レストランやスーパー等では一般的に英語が通じます。(むしろアラビア語が通じない場合があります。)
また、サウジアラビア人の英語能力も高いため、日常会話程度の英語ができれば、日常生活においては特段の不自由はないようです。
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2. リヤド駐在の魅力
(1) イスラム文化
サウジアラビアは、イスラム教の聖地メッカ・マディーナを有しており、ほぼ全ての国民がイスラム教徒であるイスラム教の国です。日常生活の中にも、イスラム教の文化が深く浸透していて、異文化で生活したい人にとっては、とても刺激的な駐在国であると言えます。
イスラム教は、お酒や豚肉が禁止されているのはご存知の方も多いと思いますが、サウジアラビアでは、外国人であってもお酒や豚肉を入手することができません。これは、隣国のドバイとの大きな違いであり、ドバイでは外国人専用の豚肉コーナーが設けられています。
また、1日5回あるお祈りの時間には、アザーンと呼ばれるお祈りを開始する合図となる音楽が、いたるところにあるモスクから鳴り響きます。※1回目のお祈りは、朝方の5時前後であることもあり、慣れない人はアザーンで目を覚ますようです。
近年は、国家政策であるサウジビジョン2030により社会改革が進んできていますが、以前は、レストランにおいて男性と女性(厳密には、”男性のみ”と”女性を含む家族連れ”)毎に、入口、飲食のスペースが分けられていました。
まさにサウジアラビアでしか味わえないイスラム文化の中で生活できることは、サウジアラビア駐在の魅力の一つであると言えます。
また、文化とは別の視点となりますが、前述の通り、サウジビジョン2030を掲げ改革に取り組んでおり、まさに一つの国が変わっていく様子を体感できることも、魅力であるのではないでしょうか。
(2) 収入・待遇・旅行
サウジアラビア駐在をした方が、魅力として挙げることとして、収入・待遇面があります。
生活にイスラム教が深く浸透していることから、日本と同じような生活をおくることは難しく(お酒、豚肉がないことがその典型)、各企業ともハードシップ手当が高く設定されている国となっています。
日本への帰国制度や他国への保養休暇等の制度も充実していて、会社の負担でヨーロッパに旅行に行けることも魅力であると言えます。
また、サウジアラビアは、ヨーロッパへ旅行に行きやすいことも魅力として挙げられます。ロンドンやパリ等の主要都市には、リヤドやジェッダから直行便が出ています。飛行時間も5時間前後であり、また時差がヨーロッパの国と2時間程度であることからも旅行がしやすい国となっています。
また、ラマダン(断食)明け休暇、ハッジ(大巡礼)明け休暇という長期休暇が年2回あることもあり、隣国へ旅行に行くには最適な駐在地となっています。
また、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手がサウジアラビアのサッカーチームのアル・ナスルに移籍する等、スポーツにも国をあげて力を入れております。
スペインやイタリア等のサッカーの大会がサウジアラビアで開催されたり、世界的なゴルフ大会や、世界一の賞金がかかる競馬等、スポーツ観戦も駐在における魅力に挙げられるかと思います。
(3) 構築できる人間関係の幅と深さ
サウジアラビアの在留邦人数は、前述の通り947名となります。駐在都市としては、首都リヤド、ジェッダ、ダンマンの3都市が中心であり、概ね各都市300名程度となっています。
300名程度の日本人数ですと、基本的には9割以上の駐在者の顔と名前が一致する状況になります。また、コミュニティが狭いこともあり、家族ぐるみでの付き合いを含め、より深い人間関係を築くことができます。
各企業毎の駐在員数が1名から多くても数名であることから、他社の人との繋がりができ、また年齢に関わらず交流関係を深めることができます。サウジアラビアでは、日本人コミュニティでサッカーや野球、ゴルフ等のスポーツをやることが盛んなようで、世代を越えて集まるようです。
また、2ヵ国目、3ヵ国目の駐在員の方が多く駐在経験が豊富であることから、人間関係が難しくなることも少ないようです。
3. 駐在生活の実態
(1) 住環境・医療体制
① 住居
駐在員の多くは、コンパウンドと呼ばれる外国人居住区に住んでいます。コンパウンドは壁に囲まれてた居住区でセキュリティが確保されており、コンパウンド内には、レストランやスーパーマーケット、スポーツジムやプール等が設けられています。
コンパウンド内では、イスラム教の生活習慣から離れた生活が可能であり、イスラム教の女性が肌を隠すために着用するアバヤが不要であったり(近年は、コンパウンドの外においても外国人の着用は義務ではありませんが、慣習的に着用が推奨されているとのことです。)、お祈りの時間にお店が閉まることがなかったりと、外国人にとって住みやすい環境となっています。
② 医療体制・リヤドの病院
サウジアラビアは、比較的高い医療水準を有しています。医者は、医療先進国で学んだサウジアラビア人の他、ヨーロッパを中心に外国人の医者も多くいます。
また、外国人に対しても医療提供についての差別がないことも駐在する上では大きな点となります。新型コロナウイルスのワクチン摂取についても、他国よりかなり早い段階で、サウジアラビア人・外国人の区別なく、全員無償でワクチンを提供していました。
下記病院は、日本人駐在員の方がリヤドでより利用する病院となります。
- Dr. Sulaiman Al-Habib(スレイマン・アル・ハビブ)
- Kingdom Hospital(キングダムホスピタル)※キングダムコンパウンドに隣接
- Specialized Medical Center Hospital(スペシャライズド・メディカル・センター・ホスピタル)
(2) 子育て環境
サウジアラビアはイスラム教の国であることからも、子供に大変優しい国です。ほとんどのサウジアラビアの方は、ショッピングモールやレストラン等で子供が騒いでいても、嫌な顔は一つせず優しく見守っています。
意外に思われるかもしれませんが、小さい子供を帯同している駐在員の方は多くいるようで、もちろん日本と同じ環境ではありませんが、子育ては比較的しやすい国のようです。
また、コンパウンド内に保育園や幼稚園が設置されている他、コンパウンドによってはインターナショナルスクールが併設されており、教育面においても安心して通園・通学ができます。
(3) 日本食
サウジアラビアで手に入れることができる日本食材はかなり限られています。日本からの輸入品はほとんどなく、一部ある輸入品についても日本の価格の3倍〜5倍ほどとなっています。
リヤドには日本食レストランも数店舗ありますが、基本的には現地の人向けの日本料理店が多いです。
リヤドの中心に位置するタハリア通り(Tahlia Street)の高級ショッピングモール・セントリアモール(Centria Mall)にあるYOKARIレストランには、日本人のシェフがおり本格的な日本料理を味わうことができます。
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まとめ
今回はサウジアラビアの首都リヤドでの駐在生活についてご紹介させていただきました。
聖地メッカを有するイスラム教の国であり、イスラム教が日常生活にも深く根付いていることから、日本と同じ生活をしようとすると日常生活に不自由はあります。一方、日本の生活とは全く異なるイスラム文化の中で生きられることは、他の駐在地にはない魅力ではないかと思います。
また、国家政策「Saudi Vision 2030」の実現に向け、改革が進んでおり、日々の生活において国が変わっていく様子を伺えるのも魅力なのではないでしょうか。
観光ビザの発給も開始し、今後、観光地の整備は新しい観光スポットの開発等、生活しやすい国になっていくのではないかと思います。
サウジアラビア駐在準備のご参考にしていただけましたら幸いです。